Aug 17, 2008

原風景

小雨降る涼やかな古都鎌倉の日曜日、帰省先から自宅へ向かう車が慌しく店の前を通り過ぎる以外は、行き交う人もごくわずかで、静かな朝を迎えている。この雰囲気に合う音楽を流して、少しリラックスした気分に浸っている。

昨日、以前夫の父親に送った手紙とチビの写真を、父親宅を訪れた夫のお兄さん家族が読み、喜びのメールが届いた。しばらく彼らと音信不通だったため、『これを機に、これからはメールでもっと連絡を取ろう!』という嬉しい内容だった。姉、兄、夫、妹、妹、弟という、今時の日本では珍しい6人兄弟。その中でもひときわやんちゃだった夫は、常に喧嘩が絶えなかったらしい。16歳で一人故郷を離れてからも、親や兄弟に心配をかけてばかりで、故郷に戻ると父親やお兄さんからいつも説教されていたようだ。そんな弟からの元気な便りを読み、皆大層喜んでくれたようだ。

夫の故郷は、外国人が簡単に出入りできない地域であり、また、義父も高齢であまり遠くへ外出できないため、私はまだ夫の家族に会ったことがない。彼らにとって日本は、テレビでしか見たことがない「遥か海の向こうの国」。夫が日本に来て初めて海を見たように、義父や兄弟達も一度も海を見たことがない。さすがに兄弟達はパソコンも使えるし、都会へ行った事もあるが、海だけは未知の世界のようだ。だから夫がチビを連れて毎日のように海へ行く話をすると、まだ見ぬ海にいる弟親子に思いを馳せ、楽しんでいるようだった。

久し振りに兄弟達と連絡が取れ、どこか嬉しそうな夫。自慢の息子を連れてすぐにでも会いに行きたいところだが、それはなかなか叶わないため、せめて写真だけでもと「カメラを持って鎌倉の町を撮りまくる!」宣言をしていた。
頼もしいこと....。

夫の故郷の風景は、私にとって原風景であり、かつてモンゴルの大草原を旅した時に感じたあの感情が蘇ってくる。

夫の家族や兄弟達がまだ見ぬ日本に思いを馳せるのと同じように、私もいつか訪れるであろう夫の故郷に、自分の原風景と重ね合わせて胸躍らせている。