夢で懐かしい人が現れ、それに合わせて当時よく利用していたカフェが思い起こされた。
今でもそうだが、何か考え事をしたり、勉強をするのにカフェを利用するのが大好きで、千葉に住んでいた頃、あまり混まない、長く居ても邪魔にならないカフェのデータが、私の頭の中にたくさんあって、場所や状況に応じて活用していた。今では懸案事項が山ほどあるにもかかわらず、カフェに行く時間が無いため、頭のデータがちょっと不足している。
海外を旅していてもこのスタイルは変わらず、いつも目的の無い旅のため、朝早くに起きてその国に合ったカフェや市場や屋台で、コーヒーやお茶やお湯を飲みながら、その日のスケジュールを決める。お気に入りの場所が出来て通い詰めたりすると、店の人やお客さんと親しくなり、『どこで働いてるの?学生?』などと地元同士の会話となり、旅人だと告げると驚かれたり、適当な地名を挙げて地元民になりすましたり、他愛の無い会話を楽しむ。旅の中で最も好きな時間の1つだ。その国の本当の顔は、脚色の多い夜よりも、素顔の朝の方に表れると思っている。そして沈み行く太陽よりも、これから昇っていく方が前向きな気分になれていい。
夏休みに南半球に行き、冬休みは普通に寒いところに行くせいか、私の旅の朝は凍えていることが多い。そして、アメリカなどでは映画でよく見る地下鉄の排気口から出る白い煙、アジアでは屋台の湯気、カナダではどんよりとした空など、スモーキーな印象が強い。また、早朝の清掃風景も、それぞれお国柄が出ておもしろい。大きなトレーラーで一気にゴミを掻き集める欧米諸国、大きな袋を手にひたすら人海戦術のアジア諸国。しかし共通して言えるのは、みんな朝からよく働いていて、自分の怠け者加減を思い知る。更におもしろいのが通勤・通学の風景。テイクアウトのコーヒーやチョコバーを手に歩く欧米諸国、古びたバイクに4~5人乗っていたり、自転車を自分でバスの上にくくりつけて飛び乗ってくる人など、エキサイティングなアジア諸国。おもしろいのは断然アジアだが、みんな違ってそれがいい。
大学生の頃の4年間、朝市でバイトをしていた。朝5時起きの辛いバイトで、時給も安く、その後家庭教師のような割のいいバイトが見つかり、何度も辞めようと思ったが、意地っ張りで物事を途中で投げ出すのがイヤな私は、結局4年間続けてしまった。まだ星の出ている朝5時に家を出てバイクで現地に向かい、8時頃寮に帰る。山の上にある保養所のロビーで開く特設朝市がメインだったため、バイトを終えて外へ出ると、眼下に広がる広大な海と澄み切った青空は、辛くて安い賃金のバイトのボーナスであり、その日の活力の源だった。
あの頃に比べたら、朝7時起きの今のなんと贅沢なこと。それでもブツブツ言いながら起きるという、この体たらく。人間、怠けだしたら切が無い。
旅先や朝市のバイトの頃の、キリッとした朝の寒さが妙に懐かしい。
うちも早朝オープンにしようかな?.......... しない、しない。