この黄色の花は「蝋梅(ろうばい)」と言って、花びらが蝋細工のようなことからそう呼ぶらしい。店の裏に住んでいて数ヶ月前に施設に入所したおじいさんが、自宅へ荷物を取りに帰ってきた際に庭のこの梅の木を折って持って来てくれた。花などの植物の名前に疎い私、おじいさんの口から「ロウバイ」と聞いた時、頭に浮かんだ字は「老梅」、もう少しでこの言葉を口にするところだったが、おじいさんが花の説明をし始めたので恥をかかないで済んだ。
「老」という字は日本語ではあまりいいイメージは無いが、中国語では尊敬や親しみの意味を込めて多用される。「老板」「老公」「老婆」「老家」..... 例を挙げれば切が無い。日本の漢字も元を辿れば中国から、きっと以前は同じような意味合いがあったかもしれない。
鎌倉はいわゆる「老人」が多い。しかし皆元気で、博識で、そして優しい。夫が私の使いで郵便局やらチビを連れて公園へ行くと、優しく声を掛けてくれるのはいつもお年寄りの方。夫のヘタクソな日本語に一生懸命付き合ってくれたり、やんちゃなチビにお菓子をくれたり、これらの親切は全てお年寄りの方からで、長く生きてきた方は懐が深い。
中国語で「妻」を意味する「老婆(ラオポー)」、中国へ行けば私にも「老」の字が付く。この場合の「老」には日本語の「老人」的な意味は無いと言うが、博識で優しい「老人」と同じ「老」なら、ありがたいことだ。
そんなことを考え始めたら、「蝋梅」よりも「老梅」の方が素敵に見えてきた。
優しいおじいさんがくれた「老梅」、うちではこっちにしておこう。