所によってはみぞれまじりの冷たい雨模様の鎌倉、おかげであまり喜ばしいことではないが、ブログがゆっくり書ける。ちょうどここで、BGMに流していたラジオからMr.Childrenの「HANABI」がかかった。ミスチルは全く私の音楽の趣味に合わず、これまで好んで聞いたことは一度もない。あのまったりとした歌声と曲調が、どうも好きになれない。しかしこの曲だけは、なぜか心に留まっている。
年末のテレビ番組で歌番組が多くなっていた頃、歌番組は映画以外で夫が楽しめるTV番組のひとつのため、自然と選んで見ているうちにこの曲と何度も出会った。『もう1回~もう1回~~♪♪』のフレーズが繰り返し流れるため、日本語がわからない夫もなんとなく覚え、テレビに出てくる度に『またもう1回だ!』と言うようになり、私の方はミスチルの曲だったためそれまで気にも留めずにいたが、どんな歌だろうとソファに腰を下ろしてゆっくり歌詞を追いながら聞いてみると、今の20代、30代、あるいはそれ以上の人が抱く不安や切ない気持ちがよく表れ、それがあの切ないメロディーにマッチしていて思わず聞き入ってしまった。
夫が初めて日本に来た時、成田から千葉へ向かう電車の中で、乗客皆が死んだような目をしていたことに非常に驚いていた。そして、ニュースで流れる自殺の多さに、理解し難さを感じていた。皆がある程度の水準を保っている日本では、少しでもそのレールから外れるとまるで人間失格のような気持ちに陥る。道端で物乞いをする人があっちこっちにいて、屋根のない家などゴロゴロしている国を旅していると、日本はどれだけ恵まれている国かがよくわかる。そこの国では、人々は自分の存在意義やら理想と違う自分がどうのこうのなど考えている暇はなく、とにかくどうやってお金を稼いでどうやって今日、この先食べていくかを必死に考えている。それでも、自分で死んでしまおうとは考えない。
日本はどこもかしこも綺麗だ。それは景観だけではなく、人間の生き方までスマートで美しい.....表面上は。本当はお金が欲しくても、表面上は拝金主義を嫌い、どんなにイヤな相手でも、表面上はフレンドリーに振舞う。そういった心と行動とのギャップが、少しずつ心を蝕んでいるような気がする。生きていくこと、食べていくことは、泥臭い、生々しいものだ。自分の主義主張だけを唱えてニコニコしているだけでは、誰もお金をくれない。拝金主義の何が悪いのか?なんでこんなバカ上司の下で働かなければならないのか?それは食べていくため、家族を養うためにしていること。それらのために自分の主義主張を曲げ、バカな上司の言いなりになる自分のなんと潔いこと!と褒めてあげる。これぐらいのたくましさとポジティブさが欲しい。
『どれくらい値打ちがあるのだろう?僕が生きているこの世界に~♪♪』という歌詞から始まるミスチルのこの歌、外国人の目に死んだように映る日本人の顔は、繊細な若者の心にも同じように映っていることだろう。人生は、映画やゲームのように素敵でもスマートでもない。泥臭く、生々しく、苦しいものだ。人々が、そんな人生をたくましく、ポジティブに生き抜いていくことを誇りに感じ、そこに価値を見出していけるようになればいいなと、この歌を聞く度に感じている。