「暖かい」と言うよりは「生ぬるい」陽気の師走の朝、いつものようにコートとマフラーに手袋までして店まで歩いたら、額に汗が滲み出ていた。まぁ、寒いよりは暖かいに越したことは無いが、明日からまたグッと寒くなるらしく、日毎の寒暖の差の激しさに、店に置く季節物の商品の陳列に頭を痛めている。
冬の朝の我が家の定番は、「トゥクパ」と呼ばれるチベット風すいとん。野菜たっぷりの塩味のスープの中に、小麦粉をぬるま湯で溶いてこねて棒状にし、それを手で引き伸ばしながら小さくちぎって直接入れる。日本のうどんのように麺を別茹でしないため、スープがシチューのようにとろみをおびて、身体が芯から温まる。私の大好きな一品だ。
初めて食べたのはもちろんチベット、しかも夫の手料理。市場で仕入れた野菜やヤクの肉でスープを作り、器用に小麦粉を操って次々とスープの中へちぎり入れる姿は、手先が不器用な私には神々しく光り輝いて見えた。日本に来てからも「初めのうちは」ちょくちょく作ってくれた。そう、「初めのうちは」ね...... しばらくすると、全く作ってくれなくなった。一日中チビに付き合わされてクタクタになるのか、夜になるといつもグッタリとしている。まぁ、ムリもない。私は料理が好きなので炊事を負担に感じることはないが、しかし他の誰かが作ってくれたものは自分のものより数段おいしく感じるため、チョッピリがっかりしていた。
ある朝、夫が長い間「トゥクパ」を作ってくれなかったため、自分で挑戦してみた。スープは上出来だが、やはり小麦粉がうまくいかない。見るに耐えないドロドロの「トゥクパモドキ」を仕上げると、夫は文句を言わず食べてはいたが、翌朝再び作ろうとした時『やろうか?』と自ら小麦粉をこね始めた。シメシメ..... 別に私の不器用さは謀ったものではないが、うまくいった感じだ。
それから冬の朝は、決まって私が先に昼の弁当と「トゥクパ」用のスープをこしらえ、後に起きてきた夫が私がシャワーを浴びている間に練った小麦をスープに投入する。抜群のコンビネーションのように見えるが、残念なのは私がそれを食べる時間が無いこと。『朝のシャワーを止めれば、十分食べる時間があるだろう!』と朝シャンの習慣がない夫に言われるが、こればっかりは止められない。小学生の時からの習慣だからね!
大好きな「トゥクパ」は、残りを夜に再びスープや野菜を追加して食べる。実は私、少し汁気を吸ってびろろ~んとなった方が好きなのよね~♪♪
「トゥクパ」の超簡単レシピはこちらで →→→ 「チベット雑学 トゥクパとは」