飛び石連休の「石」にあたる月曜日の鎌倉は、寒い朝を迎え、この秋初めてコートを着て家を出た。いつの間にか、そんな季節になっていたんだなと、少しずつ色づき始めた道中の「もみじ」の葉を眺めながら、しみじみ感じていた。
「食欲の秋」と言ってもまだ焼き芋は食べていないし、「運動の秋」と言ってもチビを抱っこしながら、ウエイトリフティング並に腕の筋肉を鍛えているだけで、なんだか秋の風情がない。そのせいかどうかはわからないが、夕べ仕事を終えて9時半ごろ家に戻り、昼寝をしなかったチビが早々に眠りについているのを見ると、なんだか無性に本を読みたくなって、悪戯されないように隠してある開かずの間の本棚から本を1冊取り出し、さっさと食事と風呂を済ませ、寝息を立てるチビのベッドへ潜り込んで読書を始めた。
こんなゆったりとした時間は、何ヶ月、いや何年ぶりだろう。本当はソファにどっかりと座り、温かいカフェオレでも飲みながら読みたいところだったが、夫が大音量でTVを見ていてイラッ!とし、でもせっかくの夜に喧嘩をするのももったいなかったので、カフェオレの代わりにチビの寝顔で癒されながら、「読書の秋」をしばし楽しんだ。
以前モンゴルを旅していた時、ホームスティした家、というかゲル(テント)で、夜は電気も無いのでもちろんテレビも無く、たった1本のロウソクの薄明かりの中で、旦那さんと奥さんがボロボロになった本を、お互い交代で回し読みしていた。当時そこには2歳のやんちゃ坊主がおり、その子に悪戯されたのか本に表紙は無く、数ページが破れかけ、あっちこっちつぎはぎ状態だった。風の音がゴウゴウ唸るだけのゲルの中、暖かなロウソクの光に照らされた本を読むその姿は、なんだかとても神々しく見えた。
気が付けば、うちにもモンゴルの血を受け継いだ2歳のやんちゃ坊主がいた。もしこの本をチビの目の付くところに置けば、数分であのゲルの本と同じ状態になるだろう。違いと言えば、同じモンゴルの血を持つ夫はTV三昧で、私に神々しいほどの魅力は無い、ってこと。
草原は、そろそろ雪の季節。今頃はきっと、ウランバートルの町へ移り住んでいるに違いない。
あ~、揚げ餃子が食べたくなってきた。
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