お隣のお店からポピーを頂いた。
以前住んでいた千葉の猟師町から南下していくと、今の時期一面にポピーが咲き乱れ、花摘みに来る観光客で賑わう。この世のパラダイスみたいな海と空と花の風景が、なんだか妙に懐かしい。
母が癌で闘病中、この地域から病院に花を送ったことがある。それもダンボールで、半端じゃない量の花を。金額にして5千円ぐらいだったが、町の花屋の5千円と違って卸値販売の5千円は、半日くらいは軽く花屋を営めるぐらいの量だったろう。母とはいつも口を開けば喧嘩ばかりで、だからすぐにお互い音信不通になってしまい、入院の連絡も数年ぶりの電話からだった。色んな意味でなんだか頭にきて、お見舞い半分悪戯半分で、病院の住所を探し当てて送った。案の定あまりに大量の花々はありがた迷惑だったみたいで、病院で捌くのに一苦労だったそうだ。それを聞いた電話口で、シメシメとにんまり笑っていたのを思い出す。
その後退院したが再び転移して、最初の闘病からわずか2年であっけなく逝ってしまった。人生なんて儚いもの、花の命のように短い。
闘病中に看病していた姉に、私が以前母に頼んで名古屋のお土産物を送ってもらったその代金を、返してくれないと言い残していった。お金にうるさい母を熟知していたため、わずか1,500円だったがすぐに口座に振り込んだにもかかわらず、しかもそれが遠くに住む娘への最後の伝言かと思うと、お棺の亡骸に一言文句でも言ってやりたい気分だった。
ポピーは花が咲くとかわいいが、ツボミはとげとげの毛虫みたいだ。母に花を送る時、販売所のおばさんに『ポピーは短命だから送らない方がいい!』と言われ送らなかった。なんならあの時、ポピーのツボミばかり送ってやればよかったかな?トゲトゲで、短命で、まるで誰かさんのようですね、ってね!
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