Mar 4, 2011

みかんでもいいや!


雲ひとつない青空、しかし真冬のような冷たい風が吹きすさぶ中、ちっちゃなリュックにちっちゃなお弁当箱とちょっぴり大きな水筒を入れて、意気揚々とチビが遠足に出掛けて行った。遠足と言っても、保育園から徒歩で9時に出発し、1時半には戻ってくるような短距離コース。それでも4歳の子供にとっては大冒険で、引率する先生方も終始神経ピリピリのことだろう。

そんなチビの大冒険に少しでもかかわりたくて、ママはいつもより1時間以上も早起きをして、せっせせっせとお弁当作りに勤しんだ。チビにとって初めての遠足だった秋には、定番の鶏のから揚げに卵焼き、まん丸おむすびに果物を入れて、かわいらしくデコレーションをしてみた。帰ってきてから何が美味しかったかと尋ねてみると、『(缶詰の)みかん!』と連呼されかなりガックリ。今回のリクエストもみかんと更にりんご、後は大好きな鶏のから揚げと酢飯だけの海苔巻き。『野菜は入れちゃダメよ!』と念を押され、『はい、はい!』と答えたものの、身体に悪いからとマカロニサラダを作って入れると、お弁当が出来上がった頃に起きて来たチビのチェックで撤去され、から揚げとみかんが倍増された。まぁ、今日は遠足だからいいか......?

以前TVで、母親が(たぶん)高校生の息子のために、毎日毎日朝早くから心を込めたお弁当を作り続け、最後の日に空っぽのお弁当箱に息子から「ありがとう!」のメッセージが入っていた、という感動のCMを一度だけ見たことがある。お弁当は一方的なメールのようなもの、という台詞が確か流れていた。私の母親は小さい頃はとても料理上手で、近所の奥様を家に招いて教えたりするほどで、確かに美味しかった記憶もある。しかし、高校に入った頃には『もう大人なんだから自分で作りなさい!』と母親から完全家事放棄宣言が出され、姉と当番で作ることになった。しかし、全く当番を守らない姉のせいで、結局朝から晩まで全部自分で作る羽目になった。

その後大学で家を出て、そのまま社会人になって一人暮らしをしたため、10年以上母の手料理を食べたことが無かった。久々に帰郷して母の家へ行き、温かい手料理でも振舞ってくれるのかと思いきや、『あんたの料理は美味しいから.......。』と乗せられて、結局私が振舞うことになった。そこで母の味を食べ損ねたまま間もなく母が他界したため、母の味は幼い頃の想い出の味になってしまった。想い出だから多少美化されているが、美味しかったろう母の味は、きっと今の私の料理の基礎になっていることだろう。

子供の想い出に五感で迫れるお弁当は、結構ずるいアイテムかもしれない。でもせっかくだから、このアイテムを十分活用してやろうと思う。まっ、母のように、中学校までで息切れしてしまわないよう、の~んびりとね!

今日のナンバーワンも、きっと「みかん」なんだろうなぁ.......。

posted by 天珠/曼荼羅/仏画(タンカ)の通販・販売 チベット専門店【蒙根】